企業の開示情報を頼りに株式投資

5017 富士石油  

 

斜陽化が進んでいる。車の燃費が向上し若者の車離れも進む。人口減少の影響は石油系燃料の需要にも及んでいるから、石油精製業界はたまったもんじゃない。政府は産業競争力強化法を2013年に制定し、供給過剰となった国内の製油所を主導権を握り整理しようとしている。近頃製油所の統合や石油会社の合併話が出て来るのは、こうした背景があるからだ。ガソリンは製品としてどこの製油所で生成されても基準が同じだから、製品としての優位性でもって差別化することは出来ない。競争力は各社のコスト対応力に集中される。

 

富士石油は、千葉県袖ケ浦に製油所を持つ独立系の会社だ。東京湾を臨み右隣には東京電力、そして左隣には住友化学が位置しパイプラインで結ばれている。重油とナフサの売却先だ。ジェット燃料やガソリンもJALやコスモ石油など納入先はすでに決まっているので、営業いらずの生産・販売が可能な点が最大の強みとなって同社を支えている。

決算は原油価格と為替に大きく左右される。原油価格が下がると販売価格が下がるので、先入先出法により、原価の高い仕入れ値で決算されるととたんに赤字になる。原油価格の動向と株価の相関性が高いことが、この会社の投資判断の基準となってしまっている。今後も石油製品の需給バランスの歪みは続く。海外、特に東南アジアでは需要は旺盛だが、現地には近代化された大規模な製油所も多く輸出に頼ることが出来ないのも現状だ。

 

そのような中、何故富士石油なのか。都心に近く最大のマーケットを背景に、コストの低い製油所を持つ同社は、ある意味業界からすると必要不可欠な存在なのだ。故に今後予想される業界再編の目玉になることが予想される。