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為替に物申す

 最近の為替の評論には呆れるばかりだ。有事には円が買われるという。しかも北朝鮮問題で日本が巻き込まれる懸念も有るのに有事には円が買われるのだそうだ。不思議なものだ。かつては日本には地政学上全く関係ない有事でもドルが買われ円は売られたものだ。軍事力の裏付けのあるドルを買い円を売って逃避する、という世界的な投資家の理屈がそこにはあった。

 

そもそも為替相場は何で動くのか。教科書では、3つの要因を示している。一つは貿易収支、2つ目は金利格差、そして3番目はスペキュレーションである。30年くらい前に遡ると貿易収支あるいは経常収支が為替相場を動かす主因であったという歴史もあり、時の経済白書は「必ずしも自明ではない」と断りながらも貿易収支の動向とドル円の動きを関連づけて説明していた。今は、スペキュレーションの量が多くなり、為替市場に大きなインパクトを与えている。だから、数多くの訳の分からぬ与件によって為替は動く。為替評論家は金利格差を見通し要因として取り上げることが多いが、残念ながら方向性を間違えることが多い。要するに予想は当たらないのだ。為替相場を動かす与件が余りにも多いため予測が出来ない、と言っても過言ではない。専門家の新年の為替予想を返り見ると、10人中10人が外れる理由がここにある。

 

為替はチャートが最も馴染む。チャートはそもそも多くの市場参加者の考えや予測が込められているので、過去の経験則を持ち出したチャート分析が予測に活かされ易いという訳だ。最近TVに出演する女性専門家が、色々な要因分析とともにチャートの雲の話も付け加えて説明していた。おかしな話だ。チャートを語るなら他の要因分析を語るのは邪道というべきだ。チャートが市場の総意を内蔵しているのなら他の要因を並べて語るべきではなく、本物のチャーチストは余計なことは語らないのが常識だ。

 

さて有事の円高の話に戻ろう。結局円が買われているということは、為替市場は本当の有事を想定していないということではないか。

8864 空港施設

 あまり人に教えたくない銘柄がある。空港施設という比較的地味な会社だ。17/3期は増収増益予定で、中計も上方修正した。PBRは0.57倍、PERは13.5倍、時価総額は約300億円でありながら利益剰余金は366億円も抱えているから凄い。ここ数年の売上高は200億円、営業利益は30億円前後で安定して推移している。注目されるのは、この業績だけではない。訪日外国人の増加で羽田空港の輸送増、インバウンド消費の恩恵を受けるだけでなく、成長性を追求した投資も活発で、昨年には羽田にホテル(JALシティ)も新たに稼働したから来期も楽しみだ。さらに北九州空港では三菱重工に貸し出すMRJ用格納庫を建設しており、将来の収益源として期待される。また、空港コンセッションにも参加することも視野に入れている。単独では無理といても、最近関空コンセッションを落としたオリックス社あたりとアライアンスを組むことも考えられる。そういえば、ホテルの賃貸先は確かオリックス不動産だ。オリンピックに向けた準備は着々と進んでいる。

8591オリックス

 オリックスの事業の変遷に注目している。ご承知のように同社はリース会社であって、リース会社ではない。総合金融業でもあるが、最近は再生可能エネルギーやコンセッションにも参入しているのだ。再生可能エネルギーは、電力固定価格買取制度(FIT制度)が始まり、20年間の買取が保証されるので、20年の超長期債権を買うケースと同じ感覚と言っても良い。営業やプロモーションが不要のうえ投資に見合った利回り計算が出来るので、融資案件が少ない中、金融業としてはリスクの低い最高の事業と言えよう。

 

最近では八丈島の地熱発電開発を行い、地産地消型クリーンエネルギーも事業化している。これは離島のエネルギー開発のモデルとして今後脚光を浴びることも考えられる。離島は日本だけではなく、世界中に数えきれないほど有るからだ。

 

 関西空港をはじめとして、民営化コンセッションにも積極的だ。空港運営や水道事業は、自治体の財政悪化問題が関係するため、今後も民営化の流れは止まらないだろう。そして、ここ2年くらいで、これらのコンセッションの勝ち組、負け組の色分けが見えて来たことが大きな注目点だ。勝ち組の落札勝利パターンが確立されてしまうと、今後は、負け組は撤退するか、負けを繰り返すことになると予想される。同社は完全な勝ち組になったと感じられてならない。また、これもとりあえず20年の利回りが計算出来、しかも高利回りなので、豊富な資金の投資案件としては持って来いだ。同社の事業投資部門は毎年増収増益を続けているが、このセグメントが伸びるのはむしろこれからが本番となるだろう。そして、このことはまだ投資家の間ではあまり気づかれていない。投資余地としては十分だ。