企業の開示情報を頼りに株式投資

4733 OBC

 

営業利益率41%。なぜそんなに儲かるのか。それは販売パートナー3,000社、エンドユーザー56万社を囲い込んだ事業の仕組みに隠されている。顧客は中小企業、とはいってもパパママストアのようなところが多い。経理、総務用のいわゆる会計ソフトの商品開発は、PCのOSの進化や税制改革、制度改革等に合わせ常に更新、バージョンアップ対応として行われている。しかし、それは莫大な研究開発費や投資が必要なものとは思えない。要するに、中小企業の会計ソフト市場をすでに押さえ販売の仕組みを構築してしまったこと、開発コストがそれほどかからないこと、そしてOSのバージョンアップ等によって需要が定期的に喚起されること、がこの利益率を生み出す根源だ。

 

元々会計士だった和田社長は、非常に温和な性格だが、ビジネスには野心的である。パッケージソフトから始まったビジネスモデルは、クラウドサービスへ。そして現在は会計ソフトのフロービジネスへと改革を急いでいる。それは、一方でパッケージソフトの普及期がすでに終了し、これまでの同社のビジネスモデルを変えていかないとシュリンクが止まらないことも意味している。保守・メンテナンスサービスの比率をどれくらい上げられるのか、今後の生き残りをかけた経営戦略の注目点だ。

 

同社の時価総額は約2,200億円だが、現預金は760億円、投資有価証券は290億円ある。まとまった設備投資が必要のないソフト会社なので、全て余裕資金と見られる。投資有価証券は、有価証券報告書を見るとリートが主な投資先で、毎期この含み資産を小出しに吐き出すことで、営業外利益をコントロールしている。まさに理想的な財務戦略が絵に描いたように実践されている。利益剰余金630億円は、毎期40億円~60億円が積み上がり、配当原資は余裕が有り過ぎだろう。積極的なM&Aはどちらかというと苦手なため投資先が見つからず、市場から株主還元の圧力が更に高まることを会社は恐れている。どこかで買いたい銘柄の一つだ。

8818 京阪ビルディング

こんな会社があったのか!注目されるのは営業利益率40%。そして内部留保350億円の凄さだ。それだけではない。この会社、たった43人の人員しかいない究極のエリート会社だ。不動産業とはいえ、馬券売り場ウインズビルやデータセンターなどを有し、超優良顧客を囲い込んでいる。他に商業施設や物流センター等もあり、稼働率は極めて高い。逆に言うと空室率は低く、これがバカげた利益率を実現させる原点だ。


そもそもこの会社の「ルーツは」というと、阪神競馬場に辿り着く。関西の有力な馬主と地元経済界をバックに設立された。大阪の中心地や主要な場所には古くから同社のオフィスビルが存在感を示し、好立地、高機能がこの会社のキーコンセプトとなっている。


もちろん今の経営陣は、関西経済界を支える旧住友銀行出身者で占められている。安定した業績を続ける理由は物件だけにとどまらず、ここにもある。
毎年計上される約30億円の純利益は、あらたな投資先が無ければ利益剰余金として留保される。最近は低金利が追い風になっている一方不動産価格は上昇しており、なかなか採算に合う物件は手に入り難い。関西地区だけでなく関東地区に進出するという経営戦略に立ちはだかるやっかいな問題だ。かといって優良投資案件が無ければ内部留保は着実に積み上がる。嬉しい悲鳴だ。毎年増配、それが現実となっている。PER11倍、PBR0.6倍とは呆れた数字だ。市場の非効率性が読み取れる。明らかに評価不足だろう。

4732 ユー・エス・エス

ユー・エス・エス、名古屋に本社がある会社で、中古車のオークション会場を運営している。名古屋の港にほど近い場所に広大な土地があり、そこに出展される中古車がところ狭しと並ぶ光景は実に圧巻だ。そしてその中に本社を兼ねたオークション会場がある。オークション会場の中に入ると、まるで大学の大講義室のように階段形式の椅子が並び、前方の広いスクリーンに出展された中古車の画面が何枚か流れ、バイヤーが次々と入札ボタンを押して値が吊り上がって行く。1台のセリに掛けられる時間はまさにあっという間だ。


 会場を見渡すと驚くことが2つあった。一つはその取引時間の短さ。買い手と売り手の両方から手数料を頂き、しかも成約すると成約手数料が入るというビジネスモデルは、このオート化されたセリ時間のスピードが強みとなって支えられている。そして驚きの2つ目は、外国人のバイヤーの多さだ。東南アジア系、中東系もいる。まるでインターナショナルな空港や国際会議場に来ているみたいで、名古屋港の近くにいることを一瞬忘れさせてくれる。日本の安い中古車は、彼らにとっては宝の山なのだろう。満足そうな表情にそのビジネスの美味しさがにじみ出ている。


 ユー・エス・エスの利益剰余金を見て、我が目を疑った。1,600億円もある。総資産が約1,860億円だから、とんどもない金額だ。しかも営業利益率は50%と驚異的な数字だから、売上高が極端に減少しない限り純利益約230億円が毎年チャリン、チャリンと音を立てて積み上がって行く。投資はどうか。全国の中古車オークション会場の約4割を押さえてしまったダントツ1位の会社は、これ以上シェアが高まると、独占禁止法という壁にぶち当たる恐れがある。これ以上の中古車オークション会場のシェア拡大に向けた投資は無理だが、業界の陣取りが終わった結果としてのシェアNO1が、更なる強みとなって競争優位を牽引する。内部留保は投資が進まなければ株主還元に振り向けるしかない。だから17期連続増配なんてことが簡単にやってのけられるのだ。
国内の新車登録台数や中古車登録台数はかげりが見え始め、ユー・エス・エスの業績も鈍る傾向にある。しかし、株価が減収を織り込み、緩んだところが絶好の買い場となるだろう。この利益剰余金と営業利益率を見たら、ヨダレが出た。多少国内市場が低迷しても海外のバイヤーの視線は熱い。新興国の発展とともに、中期的な成長も見え始めるだろう。