企業の開示情報を頼りに株式投資

投信の世界

投信は証券会社の戦略商品だ。証券会社は手数料を稼ぐために、顧客にあれやこれやと理屈をこねて投信を販売する。販売する営業サイドからすれば毎月膨大な目標を課せられ、毎日時間を区切って販売額の報告を求められるのだからそのプレッシャーは半端ではない。実際の販売実績が無いにもかかわらず、本部からの罵声をバックサウンドに営業マンが報告する数字を苦し紛れに積み上げてしまう姿は、苦肉の策というより、そのような苦しい販売事情が常態化しているため、常識が麻痺してしまっているとしか言いようがない。このような状況を仲間内では「カブリ」と言っていた。「お前いくらカブッている?」とは、嘘の報告をいくらしているのか本当のことを言えよ、ということを問いかける言葉だ。この本部への報告済の数字と販売実額とのギャッップ「カブリ」の帳尻合わせは、投信の募集締め切り日直前に追い込み販売として展開される。「出来ませんでした」という報告は許されない。「出来る」までやるのだ。従って、そこまで追い込まれると、人は今までやらなかったことまでやってしまう。こうした苦しさを超えた営業マンの行動が、証券会社の投信販売、収益を根底で支えているのだ。

さて、このような努力の末集められた投信資金。出資者に満足されるような成果をぜひ上げて欲しいものだ。投信はノーロードを除き、販売手数料約3%、信託報酬約0.3%をコストとして購入者から徴収する。金利がほぼ0の時代に、このコストを超えるパフォーマンスをファンドマネージャーは稼ぐことが出来るのだろうか。多くの投信では、運用側は分散投資でリスクをかわすが、逆に言うと分散投資がインデックス化を招き、個性であるパフォーマンスを殺してしまいかねない。優秀なファンドマネージャーでも神様ほどではないので、今の投資環境で3.3%を超える運用成果を出すのは至難の業だ。長期投資ではインデックス運用をアクティブ運用は超えられないというデータがある、との先週の新聞記事が目に付いた。運用に自信があるのなら、各投信、成功報酬型の商品に仕立てて欲しいものである。

銘柄選択

藤井四段の連覇はすごい。まだ14歳の中学生が次々に年配のプロ棋士を打ち破るのだ。世代交代の兆しを我々は感じざるを得ない。

産業界では、かつて繊維会社が、そして鉄鋼会社が、さらに電機、自動車会社の時代へと主役は変化して来た。株式市場でも時代とともに選択される銘柄は入れ替わる。20年前に時価総額の上位を占めていた都銀や電機株は今やほとんど姿を消し、代わって自動車、通信株等が台頭している。そして、次の時代には、ネット関連やICTの企業が有力な候補として疑いもなく登場するのだろう。時代の流れは最近スピードを上げているようにも見える。

今年に入って自動車株が上がらなくなった。米国の自動車ローンのサブプライム化の連想も影響としてあるのだろうが、人口減少やライドシェア、そして電気自動車、自動運転など、事業環境の変化を市場は織り込み始めているようだ。で電気自動車が主流になれば、組み立てに必要な部品は2/3となり、部品会社にも大きなパラダイムシフトが起こる。

一方、新高値を更新する銘柄が存在する中で、地銀株は下値を模索している。先週の新聞の中で、地方の信用金庫の預貸率が50%を割り込んだとの記事が目に付いた。地銀でも70%くらいだから、いかに地方の融資先が乏しく、経営が苦しい状況にあるかがわかる。ある意味、このような企業の時代の役割が終わったのだ。待ち受けるのは、再編、統合による縮小均衡だろう。

第4次産業革命が、ICTやAI、自動走行、空飛ぶ自動車等によってもたらされるならば、この変化に関連する銘柄に軸足を移すしかない、というのが選択の方向性となろう。PERに拘らず、新興市場も視野に入れる必要性が高まっている。市場に過熱感はあまり感じられない。

5017 富士石油  

 

斜陽化が進んでいる。車の燃費が向上し若者の車離れも進む。人口減少の影響は石油系燃料の需要にも及んでいるから、石油精製業界はたまったもんじゃない。政府は産業競争力強化法を2013年に制定し、供給過剰となった国内の製油所を主導権を握り整理しようとしている。近頃製油所の統合や石油会社の合併話が出て来るのは、こうした背景があるからだ。ガソリンは製品としてどこの製油所で生成されても基準が同じだから、製品としての優位性でもって差別化することは出来ない。競争力は各社のコスト対応力に集中される。

 

富士石油は、千葉県袖ケ浦に製油所を持つ独立系の会社だ。東京湾を臨み右隣には東京電力、そして左隣には住友化学が位置しパイプラインで結ばれている。重油とナフサの売却先だ。ジェット燃料やガソリンもJALやコスモ石油など納入先はすでに決まっているので、営業いらずの生産・販売が可能な点が最大の強みとなって同社を支えている。

決算は原油価格と為替に大きく左右される。原油価格が下がると販売価格が下がるので、先入先出法により、原価の高い仕入れ値で決算されるととたんに赤字になる。原油価格の動向と株価の相関性が高いことが、この会社の投資判断の基準となってしまっている。今後も石油製品の需給バランスの歪みは続く。海外、特に東南アジアでは需要は旺盛だが、現地には近代化された大規模な製油所も多く輸出に頼ることが出来ないのも現状だ。

 

そのような中、何故富士石油なのか。都心に近く最大のマーケットを背景に、コストの低い製油所を持つ同社は、ある意味業界からすると必要不可欠な存在なのだ。故に今後予想される業界再編の目玉になることが予想される。